「CPUについて」Intel Xeon と AMD EPYCの違いを解説
【トゥモロー・ネット テックブログ】
コンピュータの中枢を担うCPUは、その性能差がシステム全体の動作に大きな影響を与えます。そのため、効率的な作業を実現するには、ニーズに応じて適切なCPUを選ぶことが求められます。
この記事では、そもそもCPUとは何かという基本から、主要なCPUメーカーであるIntelとAMDの製品の特徴や性能差など、それぞれの違いを解説していきます。
CPU選びにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
そもそもCPUとは?
CPUとは “Central Processing Unit” の略で、日本語では「中央処理装置」と訳される、コンピュータの計算処理を行う重要な部品です。
CPUはしばしば、コンピュータの脳にたとえられます。そのため、基本的にはCPUの性能が高ければ高いほど、搭載されたコンピュータの処理速度が速くなり、快適な作業が実現されるといえます。
CPUの製造メーカーとして特に有名なのがIntelとAMDであり、世界中のCPUシェアのほとんどは、この2社の製品によって占められています。
CPUの性能比較で重視したいポイント
CPUの性能を左右するポイントとして、「コア」「スレッド」「クロック周波数」という3点が重要です。そのため、導入するCPUを選ぶ際は、これらの数値を比較し、ニーズに合った性能を持つ製品を選ぶことが求められます。
ここでは、それぞれの性能の詳細について、詳しく確認していきましょう。
コア
コアとは、実際の計算処理を行うCPUの核となる部分です。先ほどCPUをコンピュータの脳とたとえましたが、このコア1つひとつが部分的な脳の役割を果たします。
そのため、コアが多ければ多いほど、複数の脳で分担し、複数のタスクを同時並列的に処理できるようになり、全体的な処理スピードが向上します。
スレッド
スレッドとは、1つのコアが同時に処理できる作業の単位を表します。1つのスレッドしか処理できないコアと2つのスレッドが処理できるコアを比較した場合、後者の方がマルチタスク処理を行えるようになり、応答性や効率性が向上します。たとえば「8コア16スレッド」と言った場合は、CPUに搭載されたコアが8つあり、それぞれにスレッドが2つ備わっていることになります。その結果、通常は8つの処理を行いますが、必要に応じて、最大で16の処理を同時にこなせるようになります。
クロック周波数
クロック周波数とは、1秒あたりにCPUがクロックサイクルを行う速さを表します。簡単に言うと、CPUが1つのタスクを処理する速さを表す数値ということです。
CPUおよびコアを脳にたとえましたが、クロック周波数は「頭の回転の速さ」とたとえてもよいでしょう。クロック周波数の数値が高いほど、CPU内の各コアの処理速度が高くなると考えられます。
CPUの性能を比較するうえでは、以上見てきた「コア」「スレッド」「クロック周波数」の3点をバランスよく比べる必要があります。
仮にコアが多くあったとしても、それぞれのクロック周波数が低ければ、全体的な処理速度が思ったほど上がらない可能性があります。また、単一スレッドしか処理できないコアより、複数スレッドが処理できるコアが搭載されている方が、マルチタスクに強くなるでしょう。
ただし、具体的に求められるスペックは、PCやサーバーをどのように利用するかによって変わってくるので、ニーズに応じて適切なものを選ぶことが大切です。
Intel Xeon の特徴
Intel Xeonは、1998年にインテルがエンタープライズ市場向けに開発したCPUブランドで、企業やサーバー向けに特化しています。
Intel Xeon は、一般向けのPCショップで販売されているような安価なCPUとは異なり、高度な拡張機能が備わっているのが特徴的です。そのため、価格も一般向けCPUより高価になりますが、その分、安定性や拡張性、信頼性といった面で優れた性能が期待できます。
コア数
Xeonプロセッサでは、後述するEPYCと比べると相対的な数は少ないですが、1コアあたりのクロック周波数が高い傾向にあります。そのため、たとえば動画処理などで、1つの作業効率を高めたい場合には有利だといえるでしょう。
また、比較的安価なエントリーモデルであっても、一般的なCPUより多くのコアを搭載しているため、マルチタスク処理において優れた性能を発揮します。
ECCメモリに対応
Intel XeonプロセッサはECCメモリ(エラー訂正メモリ)に対応しており、データの転送中に生じるエラーを検出し、必要に応じて修正が可能です。
企業やサーバーにおいて、データの損失や破損が生じれば、事業に致命的な影響を及ぼしかねません。ECCメモリに対応していれば、通常のメモリと比較してデータの正確性が高まり、より信頼性の高いシステム稼働が期待できます。
Intel Xeon製品のラインナップ
Intel Xeonの製品ラインナップは、以下表の通りです。
それぞれに用途やスペックが異なるので、目的に合ったものを選びましょう。
ラインナップ | 特徴 |
Intel Xeon E シリーズ | エントリーレベル向けのプロセッサ。 コストを抑えつつ、基本的なサーバー機能が提供されている。 |
Intel Xeon W シリーズ | クリエイター向けに、VFXや3Dレンダリング、3D CA などに必要なパフォーマンスを実現。 Xeonシリーズの中でも高いコア数やスレッド数を誇る、プロフェッショナル向けのプロセッサ。 |
Intel Xeon D シリーズ | 限られたスペース・電力でも使用できるよう、低消費電力とコンパクトなフォームファクタを採用。 組み込みシステムやエッジコンピューティング環境に適している。 |
Intel Xeon Scalable ファミリー | データセンターやエンタープライズ向けに開発された製品ファミリー。 大規模な仮想化環境やクラウドコンピューティングに最適で、豊富なコア数や高度なセキュリティ機能を有している。 |
AMD EPYCの特徴
クライアントPC向けに提供するRyzenとは別に、AMDではデータセンターやスーパーコンピュータなどのハイエンドな領域向けのCPUとして、EPYCを展開しています。
AMD EPYCは大規模システムでの利用が増加しており、高い性能と信頼性が求められる環境での採用事例が増えています。
EPYCシリーズは、大規模な計算処理やデータ処理において優れた性能を発揮し、企業や研究機関などが要求する、高度な処理能力の提供が可能となっています。
コア数
AMD EPYCは多くのコアを搭載しており、たとえば第4世代のEPYCプロセッサでは、最大96コアが搭載され、大規模な並列処理が可能となっています。
コア数の増加は、複雑な計算や大容量のデータ処理において高い効率を発揮し、同時に複数のタスクを処理できる柔軟性も提供します。そのため、企業や研究機関などが要求する高性能な処理に対応するため、AMD EPYCプロセッサは、コア数の拡張性において有力な選択肢となっています。
総じて言えば、EPYCは先述のXeonと比べると、コア数をより多く取れる点が特徴的です。コア数が多いと、それだけCPUのマルチタスク能力が高まり、たとえばVDIのセッション数が多い場合などには有利だといえるでしょう。
新しいアーキテクチャ
AMD EPYCでは、エンタープライズクラスの要件に応えるため、通常のデスクトップグレードに多数の改良を加えた、新しいアーキテクチャが採用されています。
具体的な改良点としては、大規模な並列処理を可能とするコア数の増加、PCI Expressレーンの拡充、大容量RAMやキャッシュメモリのサポートなどが挙げられます。
EPYCは、AMDの下位製品であるRyzenシリーズやAthlonシリーズとは異なり、サーバーおよびエンタープライズ環境向けに最適化された高性能プロセッサです。特に、大規模で複雑な計算やデータ処理において大きな力を発揮します。
AMD EPYC製品のラインナップ
AMD EPYCの製品ラインナップは、以下表の通りです。
世代によって用途やスペックが異なるので、ニーズに合致したものを選定することが重要となります。
ラインナップ | 特徴 |
EPYC 7001 シリーズ | 2017年に初登場した初代EPYCプロセッサ。 最大32コア / 64スレッドまでサポートし、大規模なメモリとI/Oの処理に強みがある。 |
EPYC 7002 シリーズ | コードネーム “Rome” で知られる第2世代EPYCプロセッサ。 最大64コア / 128スレッドまでをサポートし、PCI Express 4.0サポートにより高いデータ転送速度を実現している。 |
EPYC 7003 シリーズ | コードネーム “Milan” で知られる第3世代EPYCプロセッサ。 最大64コア / 128スレッドで、改良されたアーキテクチャにより、性能と効率が向上している。 |
EPYC 9004 シリーズ | コードネーム “Genoa” を冠して2022年にリリースされた、最新世代のEPYCプロセッサ。 最大96コア / 192スレッドで、Ryzen 7000シリーズに採用されているZen 4と同等のマイクロアーキテクチャが採用されている。 |
Intel XeonとAMD EPYCの比較
ここでは、Intel XeonとAMD EPYCそれぞれを、「PCIレーン数」と「L2 Cache」の2点から比較していきます。
PCIレーン数
PCIレーン数とは、CPUやチップセットが通信するための経路のことで、GPUやNVMeデバイスなどが接続される際に重要な要素です。
PCIレーンの数においては、AMD EPYCプロセッサの方が数が多いので有利だといえます。大量のGPUやNVMeデバイスを同時に搭載する場合でも、ハードウェアの構成が柔軟であり、効率的なデータ転送が可能となります。
L2 Cache
L2 Cacheとは、CPUのデータアクセスを高速化するための一時メモリで、プロセッサ内に搭載されています。L2 Cacheがあることで、データの一時的な保持・高速の読み書きが実現され、頻繁に使用するデータに素早くアクセスできるようになります。
Intel XeonとAMD EPYCでは、プロセッサの種類によってL2 Cache のサイズが異なります。基本的には、L2 Cache が大きいほど高性能だといえますが、用途によっては、L2 Cache よりもクロック周波数などの最適化が重要なケースもあります。そのため、具体的なニーズや使用環境によって、適したスペックのCPUを選ぶことが重要です。
まとめ
今回は、CPUとは何かという基本を踏まえ、Intel XeonとAMD EPYCの違いについて、詳しく確認してきました。
CPU選びに絶対の正解はなく、要件や予算に応じて、それぞれの製品の特徴を比較し、最適なものを選定することが重要です。
特にサーバー環境では、利用者が1ではなく1,000になる可能性もあるため、慎重な検討が求められます。1人の利用者が単一計算をするならクロック周波数が重視されますが、1,000の利用者が同時に利用するなら、コア数が重視されることになります。
このように、計算処理だけでなく、アプリケーションやワークロードの性格も考慮することが、最適なCPUを選択をするうえで重要です。
トゥモロー・ネットでは、Intel Xeon及びAMD EPYCのCPUを搭載したサーバー、GPUサーバーを提供
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