2024.11.26

データセンターの消費電力問題と省エネ対策【トゥモロー・ネット テックブログ】

データセンターは、デジタル社会の基盤として重要な役割を果たしていますが、運営には莫大なエネルギーが必要です。特に近年では、クラウドサービスやAI技術の普及に伴い、データセンターの需要が急増しており、消費電力も大きな課題となっています。

本記事では、データセンターの電力問題とその省エネ対策について解説し、持続可能な運営に向けた具体的な取り組みを紹介します。

データセンターの消費電力問題とは?

データセンターの消費電力問題は、近年のITサービスの発展に伴い、深刻な課題となっています。以下では、データセンターの電力消費の現状と、環境に与える影響について詳しく解説します。

データセンターの電力消費の現状

世界的にデータセンターの電力消費は急増しており、日本においても例外ではありません。背景には、サーバーの高密度化が進んでいることが挙げられます。従来よりもコンパクトなスペースに多くのサーバーを設置することで、処理能力を高める一方、必要な電力も大幅に増加しているのです。

また、データセンターが使用する電力の多くは、サーバーの稼働だけでなく、冷却するシステムにも消費されます。サーバーの処理が高速化するほど発熱が増し、冷却システムの負担も大きくなるため、冷却にかかる電力が消費電力全体の大きな割合を占めるようになっています。このような状況は、電力コストの上昇にもつながり、経済的負担を増大させる一因となっているのです。

データセンターの増加と環境への影響

近年、クラウドサービスやAI技術の飛躍的な発展が、データセンターの増加を後押ししています。クラウドサービスは多くの企業で導入が進み、インフラの拡充が続いています。また、AIは膨大なデータを処理するため、高性能なハードウェアと大規模なデータセンターの存在が不可欠です。

このため、データセンターの規模が拡大することで、電力消費と二酸化炭素排出の双方が増加する構図が生まれています。こうした状況に対応するため、データセンター業界では環境負荷を抑えるための取り組みが求められています。

データセンターの省エネ対策の重要性

データセンターの省エネ対策は、今や地球規模の環境保護の観点からも重要視されています。世界各国が2050年までにカーボンニュートラルを目指す中、データセンター業界にも持続可能なエネルギー利用が求められています。

データセンターは、膨大な電力を消費するため、効率的なエネルギー管理が不可欠です。これに応じ、政府や多くの企業が再生可能エネルギーの利用拡大や新しい省エネ技術の導入に取り組まなければなりません。省エネ対策を推進することで、業界全体のCO₂排出削減と経済的負担の軽減が期待されています。

データセンターの主な省エネ技術

データセンターでは、エネルギー消費を抑えるためのさまざまな技術が導入されています。以下では、効率的な冷却システム、電力使用効率(PUE)の改善、再生可能エネルギーの利用について詳しく解説します。

高効率な冷却システム

データセンターの省エネ技術において、冷却システムの効率化は重要なポイントです。データセンターでは、稼働中のサーバーが大量の熱を発生させます。このため、冷却システムは不可欠ですが、従来の空冷システムは電力消費が高いという課題がありました。そこで、近年では液浸冷却や外気冷却といった効率の良い冷却技術が注目されています。

液浸冷却は、サーバーを直接冷却液に浸す方法で、従来の空冷に比べて熱効率が高く、冷却に要する電力を削減できます。また、液浸冷却はデータセンターの稼働温度の上限を大幅に上げられるため、冷却コストの大幅な削減が期待されているのです。

さらに、外気冷却(フリークーリング)は、冷涼な外気を利用することで冷却に必要な電力を抑える手法です。寒冷地のデータセンターで効果的とされ、自然の気温を活用することで大幅なエネルギー削減を実現しています。

このように、冷却システムの効率化は、データセンター全体のエネルギー消費削減に大きく貢献しているのです。

UPSと電力使用効率(PUE)の改善

データセンターの省エネ化において、PUE(Power Usage Effectiveness)という指標が重要視されています。PUEは、データセンター全体のエネルギー消費量をIT機器に使用される電力量で割った数値で、1.0に近いほど効率が高いことを示すのが特徴です。効率改善のために、多くのデータセンターがUPS(無停電電源装置)の最適化に取り組んでいます。

UPSは停電時にデータセンターの機器を守るための装置で、一般的には複数台の冗長化構成で使用されていますが、従来のUPSでは変換ロスが生じていました。そこで、最新のデータセンターでは、UPSのインバーターやコンバーターを省エネ型に置き換え、電力変換の効率を向上させる取り組みが進んでいます。また、エネルギーを二重化していた部分を効率的に設計し直すことで、システム全体のPUE改善を目指しています。

再生可能エネルギーの導入

データセンターの運営における再生可能エネルギーの導入は、カーボンフットプリントを削減するための重要な取り組みです。現在、ソーラーパネルや風力発電を活用して、自社施設で再生可能エネルギーを生産するデータセンターが増加しています。このような取り組みによって、化石燃料への依存を減らし、CO₂排出量の削減が期待されています。

例えば、データセンターの屋上や敷地内にソーラーパネルを設置し、そこで得られる電力を日中の運営に活用するケースが増えているのです。さらに、風力発電も広がりつつあり、適した地理条件を持つ場所に設置することで、データセンターの持続可能な運営に貢献しています。

日本国内のデータセンター省エネ事例

日本国内では、カーボンニュートラルを目指した省エネ対策がさまざまなデータセンターで実施されています。以下に、代表的な企業の取り組みと技術導入事例について詳しく説明します。

カーボンニュートラルへの取り組み

日本のデータセンター業界では、2030年および2050年のカーボンニュートラル達成に向け、具体的な省エネ対策を進めています。例えば、KDDIやNTTデータなどの企業は、電力消費の削減とCO₂排出の抑制を目的とした先進技術の導入に積極的です。

KDDIは、液浸冷却技術を取り入れることでデータセンターの冷却効率を向上させています。サーバーを直接冷却液に浸し、冷却のためのエネルギーを効率的に削減するものです。液浸冷却は、従来の空冷方式よりも冷却効率が高く、必要な電力を大幅に削減できるため、気候変動対策として注目されています。また、日本の気候に最適化するため、冷却液の配合や流速の管理を適切に行い、最適な冷却性能を維持しています。

一方で、今後の冷却技術として注目されるのが「直接水冷(Direct Liquid Cooling: DLC)」です。DLCは、サーバー内に設置された配管を通じて、水を利用してプロセッサーやGPUなどの高発熱部分を直接冷却するシステムです。Supermicroの「SYS-421GE-TNHR2-LCC」などのシステムは、CPUやGPUの高温部分をピンポイントで冷却できる設計になっており、サーバー全体の電力効率が向上します。

DLC技術は液浸冷却よりもスペース効率が高く、メンテナンスも容易なため、日本でも今後普及が見込まれる技術です。

政府の支援と規制

日本政府もデータセンターの省エネ推進を支援するため、さまざまな制度と規制を導入しています。経済産業省は「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づき、データセンター事業者に対して省エネ計画の策定と報告を義務付けています。また、ベンチマーク制度を通じてエネルギー効率の評価を行い、業界全体の改善を促進しているのも特徴です。

さらに、日本政府はグリーン成長戦略の一環として、データセンターへの再生可能エネルギー導入を奨励しています。例えば、再エネ導入を促進するために税制上の優遇措置や補助金が提供され、事業者が自社施設にソーラーパネルや風力発電設備を導入することが容易になっています。

このように、日本国内のデータセンター業界は、最新の省エネ技術と政府支援を組み合わせ、持続可能な運営とカーボンニュートラルの実現を目指しているのです。これらの取り組みは、企業にとっての経済的メリットのみならず、地球環境の保護に寄与する重要な施策であるといえます。

まとめ

データセンターのエネルギー消費問題は、技術の進展とデジタル社会の成長に伴い、ますます重要な課題となっています。消費電力の増加がもたらす環境への影響を抑えるためには、省エネ技術の導入や再生可能エネルギーの活用が不可欠です。

冷却システムの効率化やPUEの改善、さらにカーボンニュートラルを目指す取り組みを通じて、持続可能なデータセンターの運営が求められています。これにより、企業は環境保護とコスト削減の両立を図り、より持続可能な未来へ貢献できるでしょう。

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この記事の筆者

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