クライアント向けOSに対応し、 コンシューマ向けCPUとGPUも搭載可能モデルの導入で、 ビルド環境のデータセンター集約化に成功
株式会社スクウェア・エニックス 様
事例詳細
クライアント向けOSに対応し、 コンシューマ向けCPUとGPUも搭載可能モデルの導入で、 ビルド環境のデータセンター集約化に成功
導入ポイント
◆2010年代初頭にクライアント向けOSに対応し、コンシューマ向けCPUとGPUの搭載が可能なラックマウント型サーバーが登場した事で、コストパフォーマンスを維持しながらビルド環境のデータセンターへの移行が可能に
◆24時間365日稼働するデータセンターへの移行で、安定したビルド環境が実現。管理も容易に
◆ビルド環境構築作業の効率化と安定化が進み、複数の大型ゲームタイトルの開発にも貢献
◆CPUやGPUの世代が目まぐるしく変っていく中、開発現場が求める独自構成のサーバーを構成し、初期検証、調達、保守をトゥモロー・ネットが提供
ゲーム業界を牽引してきた開発環境を 維持しつつ、改善するためのサーバー移転
ファイナルファンタジーやドラゴンクエストなど、世界中で人気の高いゲームタイトルを有するスクウェア・エニックス。長年にわたり日本のゲーム市場を牽引してきた同社では、AIやブロックチェーンといった最新テクノロジーにも積極的に取り組んでいる。
同社の主力事業の一つであるゲーム開発に欠かせないのが「ビルド」という工程だ。開発の現場では、ソースコードをもとにビルドを行いプログラム等を実行させ検証しながら進めていく。その重要性について、情報システム部 エンタープライズ・インフラストラクチャーグループ マネージャー/テクニカル・スペシャリストの山田 宜史氏は「ビルドやパッケージ化はゲーム開発に不可欠な工程。必要となるすべてのソースコードを一気にビルドする際は時間もかかるため、そういった長時間のビルドなどは業務時間外の夜間に自動実行されるという事も日常的に行われています」と語る。
スクウェア・エニックスでは、以前からデータセンターを利用していたが、ビルドを実行する端末はオフィス内に設置していた。データセンターに設置するには、ラックに収納できる形状である事が求められ、多くの場合ラックマウント型の筐体である必要があり、そういった筐体は構成の自由度が少なく、またサーバー用のOSを利用する事が求められるからだ。情報システム部 エンタープライズ・インフラストラクチャーグループの村上 亮治氏は、「プログラマーは普段、クライアント向けOSを使って開発しています。仮にビルド用の環境をデータセンターに移し、サーバー用OSでビルドを実行するように変更したとすると、普段の開発環境と変わってしまいますし、クライアント用OSでは利用できていたアプリケーションが想定していた通りに動作しない場合もあります。なによりGPUを必須とするビルドは、用意された環境がGPUのない環境では意味がありません」と説明する。そのため、ビルド用PCとしての選択肢はコストパフォーマンスと利用機能を考慮し「クライアント向けOS、コンシューマ向けCPU・GPUを搭載したデスクトップPC」とならざるを得なかった。
しかし、いくつかの課題に悩まされていたのも事実である。一つはオフィスファシリティの問題だ。
「ビルドPCのようにほとんどリモートからの接続のみで、直接触れる必要のないデスクトップPCが多いと、通常であれば従業員の座席となるスペースがつぶされてしまいます。またオフィス内で利用できる電力量はエリアごとに上限があり電源を確保するため一か所に集める事は難しく点在してしまいます、それによって端末の管理も複雑になります。また夜間休日などの一般的には空調が止まる時間帯でも稼働しているため室内温度の上昇や、それに伴うPCの熱暴走の問題も考慮しないといけません。そこで、以前から『ビルド用のPCもデータセンターに設置できないか』と検討していたのです」(山田氏)
だが一般のデスクトップPCはラックに収納できないため、データセンターには設置できない。サーバーのなかには、GPUを搭載でき、かつラックに収納可能なタイプもあったが、形状が特殊でユニット数を多く消費したり、遠隔地からリモートで管理するためのポートがないなどの問題もあり、条件が合わなかった。
GPUを搭載したサーバーの登場で ビルド環境のデータセンター移行が 可能に
そのような状況が一変したのが、2010年代初頭だ。Supermicroからクライアント向けOS、コンシューマ向けCPUに対応しつつ、ラックに収納できるサーバーが発売されたのである。さらにGPUを搭載可能なモデルが発表されたことも追い風になった。
そこでSupermicroに話を持ち掛けたところ、保守ベンダーとして「国内でも有数の導入実績を誇る代理店」として紹介されたのが、トゥモロー・ネットだったという。選定に至るまでの背景について、情報システム部 エンタープライズ・インフラストラクチャーの松下 英樹氏は次のように説明する。
「クライアント向けOSを正式にサポートしてほしい、SSDは当社で選定したいなど、柔軟にカスタマイズしたいという要望に丁寧に応えてくれたのがトゥモロー・ネットでした。ときには、メーカーの正規なラインアップとは異なる構成を要望することもありましたが、トゥモロー・ネットはメーカーとコミュニケーションを取りながらしっかり検証して、安定して長期的に使える構成案を提案し、導入に向けた支援をしてくれました。事前の検査項目、出荷前のエージング試験などにもトゥモロー・ネットの高い技術力が感じられました」(松下氏)
そして約10年かけて徐々にビルド環境をデーセンターに移し、今ではデータセンターに設置されているSupermicro製サーバーの総数は約400台に達している。
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現場優先の保守体制が、 ゲーム開発の最前線を支えている
これらのサーバーは、複数の大型ゲームタイトルの開発において大いに貢献してきた。ビルド用の端末をデータセンターに構築した効果として山田氏が一番に挙げるのは、「管理がしやすくなった」点だ。オフィス内のデスクトップPCをビルドに使っていたころは「プログラマーが普段使っているデスクトップPC」と「ビルド用デスクトップPC」が見た目では区別できず、管理面で煩雑なところがあった。
また24時間365日体制で運用されるデータセンターに移したことで、安定してビルドができる環境が整ったという。「一般のオフィスビルでは、年に一度電気の法定点検を行います。そのときは停電になりますので、長時間のビルドは諦めざるを得ません。しかし24時間365日止まらないデータセンターであれば、ビルドに影響を及ぼさずに済みます。特に、開発のピーク時と停電が重なってもビルド環境に影響が出ないのは、大きなメリットといえます」(山田氏)
運用面でのメリットを挙げたのは村上氏だ。
「それまではデスクトップ型PCに必要なツールを組み込んだ状態で提供していましたが、デスクトップ型PCと同じ要件でサーバーが用意できたことで、マスターイメージなどもそのままラックマウント型サーバーにも展開できた点にも大きなメリットがありました」(村上氏)
10年以上の長きにわたりSupermicroのサーバーとトゥモロー・ネットのサービスを利用してきたことを踏まえて、山田氏はトゥモロー・ネットの特徴を次のように評価している。
「トゥモロー・ネットは、メーカーのラインアップにない構成であってもメーカーとコミュニケーションを取りながら可能な限り支援してくれます。ラインアップにない構成だからと言ってこちらの要望を全て受け入れて無理な構成を作るわけではなく、ディスカッションしながらこちらの意図を汲み取り安定性を担保した構成を提案してくれます。ソフトウェア開発会社として重要なのは『安定して動くこと』です。当社はビルド向けという特殊な構成でサーバーを構成していますが、『運用後の保守』を踏まえて構成を考え、支援してくれたトゥモロー・ネットには大きな信頼を寄せています」(山田氏)
そのうえで、松下氏と村上氏は、常に先を見据えたトゥモロー・ネットのサポート体制を評価した。
「原因が特定できないトラブルの場合、一般的には原因の特定や修理、交換などの対応に時間がかかってしまう事も多いのですが、その点、トゥモロー・ネットは『サーバー筐体ごと交換』という選択肢を含めて正常に動作するための修理提案をすぐに出してくれるので、開発現場への影響も最小限に抑えられています。また問題があると思われるパーツについては原因が不透明な場合は当社の要望に沿ってパーツメーカーとのコミュニケーションなどを行い原因特定と改善について最後まで粘り強く対応をしてくれた実績もあります」(松下氏)
「交換用保守パーツもトゥモロー・ネットが常時確保してくれているので、翌営業日には対応してもらえます。このようなリカバリーの速さは、ダウンタイムの短さにもつながっています」(村上氏)
このようなやり取りを通して感じるのは、トゥモロー・ネットのエンジニアのレベルの高さだという。「エンジニアは全員スキルが高いうえにレベルにばらつきがなく、誰が担当になっても安心です。特にGPUに関してはゲーム開発特有の要因から技術的に難しい点も多々あるのですが、ラックマウント型に搭載をしても安定して利用できているのはトゥモロー・ネットの力によるところが大きいと感じています。今後、時代に対応してゲーム開発環境は変わっていくと思いますので、これからもフットワークの軽さと高い技術力で支えていただけたらと期待しています」と山田氏は述べた。
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株式会社スクウェア・エニックス
株式会社スクウェア・エニックスは、エンタテインメント分野において、創造的かつ革新的なコンテンツ/サービスのヒット作品を生み続けるリーディングカンパニーです。当社グループの自社IPの代表作には「ドラゴンクエスト」シリーズ(累計出荷・ダウンロード販売本数8,800万本以上)、「ファイナルファンタジー」シリーズ(同1億8,000万本以上)、「スペースインベーダー」シリーズなどがあります。
所在地:〒160-8430 東京都新宿区新宿6丁目27番30号 新宿イーストサイドスクエア
設 立:2008(平成20)年10月1日
事業内容:デジタルエンタテインメント事業、アミューズメント事業、出版事業、ライツ・プロパティ等事業
URL https://www.jp.square-enix.com/