2023.09.13

ソフトウェア・ディファインド・ストレージ(SDS)とは? 基本的な仕組みやメリットを解説【トゥモロー・ネット テックブログ】

従来のストレージでは価格が高額であったり、複数のハードウェアの管理が大変だったりして、新しいストレージ管理法を探している人も多いのではないでしょうか。そこでおすすめなのが、「ソフトウェア・ディファインド・ストレージ(SDS)」というアプローチです。

この記事では、ソフトウェア・ディファインド・ストレージとは何かという概要から、その基本的な仕組みやメリット、導入時の注意点に至るまでを、詳しく解説していきます。 これからソフトウェア・ディファインド・ストレージの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

ソフトウェア・ディファインド・ストレージとは?

ソフトウェア・ディファインド・ストレージとは、ハードウェアではなく、ソフトウェアを中心としたストレージの導入・管理を行うアプローチ方法です。

従来エンタープライズ向けストレージでは、アプライアンスと呼ばれるハードウェアベースのストレージが中心となっていました。その際、ハードウェアに依存したストレージだと、製品や部材の販売/サポート終了やメーカーの仕様変更などの要因により、システム利用継続が困難になったり、大規模なシステム移行や特別延長保守でのコスト増に繋がったりします。その一方、ソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、特定のハードウェアに頼らず、標準的なハードウェア(汎用サーバーやJBODなど)とソフトウェアの組み合わせで、エンタープライズ向けストレージを構成します。 これにより、標準ハードウェアを用いることによるコスト削減、メーカー依存度が軽減されるため長期間に渡るシステム運用、柔軟なストレージ設計など、さまざまなメリット享受することができます。

ソフトウェア・ディファインド・ストレージの基本的な仕組み

ソフトウェア・ディファインド・ストレージの基本的な仕組みは、エンタープライズストレージを構成するハードウェアに「標準ハードウェアの利用」を行うことです。その上で、各社の提供する「ストレージソフトウェア技術」を用いることで、様々な要件に対応するストレージを提供することが可能となります。 それぞれについて、以下で詳しく確認していきましょう。

仕組み①:標準ハードウェアの利用

従来のストレージは、各ストレージメーカーが提供するストレージアプライアンスと呼ばれるハードウェアによってシステムが提供されていました。ストレージメーカーがある程度固定構成を用意しているため、ユーザーの選択肢はその中から選ぶ方式となっていました。しかし、ソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、汎用サーバーやJBOD/JBOFなどの標準ハードウェアをベースにストレージを構成し、ストレージのサービスは基本ソフトウェア側で制御します。これにより、ストレージメーカーが指定する特定のハードウェアに依存しない、柔軟で効率的なストレージの導入・運用管理が可能となります。例えば、比較的安価なオールフラッシュストレージを構築したい場合、ソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、汎用品のSSDドライブと、CPU/RAMもオーバースペックにならない様に選定した汎用サーバーを用いることで、最適なエンタープライズストレージを構成することが可能となります。これらの保守延長に関しても、汎用品を用いることで比較的安価な対応を受けることが可能となります。

仕組み②:ストレージソフトウェア技術

特定のハードウェアに依存することのないソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、各メーカーから提供されるストレージソフトウェア技術が重要となってきます。各ソフトウェア技術によって、容量、コスト、パフォーマンス、柔軟な拡張性、シンプルな管理など、様々な要件に応じたストレージシステムを構築することが可能となります。例えば、大容量で価格重視の構成であれば、安価なスペックの汎用サーバー、大容量HDDドライブ、特定のストレージソフトウェアを組み合わせることで、適切なストレージシステムを構築することができます。また、容量の柔軟な拡張性が必要な場合、複数台の汎用サーバーを用意し、要件に対応したストレージソフトウェアを組み込むことで、各サーバーの内蔵ドライブのストレージ領域を活用したスケールアウト型ストレージを構築することが可能です。

ソフトウェア・ディファインド・ストレージのメリット

ソフトウェア・ディファインド・ストレージを導入することには、多くのメリットがあります。

ここでは、特に代表的な3つのメリットについて、詳しく確認していきましょう。

メリット①:柔軟性の高さ

ソフトウェア・ディファインド・ストレージの大きなメリットとして、その柔軟性の高さが挙げられます。

従来のストレージは、特定メーカーからのハードウェアアプライアンスとして提供されていたため、メーカーからの部材や製品の供給状況に応じて、ストレージシステムの変更が余儀なくされていました。その一方、ソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、基本的に汎用のハードウェアを活用しているため、ストレージメーカーの供給状況に依存することなく柔軟なシステム設計や運用が可能となります。ハードウェア選定の自由度が高まるため、システム設計の上で、パフォーマンス、コスト、堅牢性などの要件に合わせた柔軟な設計が可能となります

メリット②:優れたスケーラビリティ

ソフトウェア・ディファインド・ストレージのメリットとして、スケーラビリティに優れている点も挙げられます。

スケーラビリティとは、ソフトウェアやシステムなどの拡張性の高さを示す言葉です。つまり、スケーラビリティに優れているということは、それだけ拡張がしやすいことを意味します。昨今のシステムでは、アプライアンスシステムでも技術的な拡張性があるものは存在します。ソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、ハードウェア選定の自由度が、この拡張性の意味合いをさらに広げます。一般的にシステムを拡張する場合、複数年に渡り、かつ利用容量が増えた時点で行います。この場合、従来のハードウェアアプライアンスでは、数年後に製品の販売終了や部材供給が終わってしまう場合、システム全体を刷新するか、延長保守などの高いコストでの対応が迫られる場合があります。一方、ソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、汎用ハードウェアが利用できるため、その選択肢の幅が広がります。

メリット③:コストの削減

ソフトウェア・ディファインド・ストレージは、従来のストレージに比べてコストが削減できる点もメリットです。 従来のハードウェアアプライアンスでは、専用のハードウェアが必要でしたが、ソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、その必要がありません。その結果、ハードウェアの購入・維持・管理にかかるコストが削減できます。具体的には、初期導入時のハードウェア選定の段階から、要件に応じた適切なハードウェアを選定することで、コストを抑えることが可能となります。例えば、SSDやHDDなどのドライブもメーカーやコスト・耐久性の面から自ら選定することも可能であったりします。大容量でコスト削減を目指す場合、大容量のHDDドライブを選定することが可能です。また、保守延長時にも大幅なコスト削減が可能です。一般的なアプライアンス型ストレージでは、各メーカーが準備するハードウェアパーツを利用する必要があるため、保守延長時予期せぬ高額な保守料金となる場合があります。一方、ソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、基本的に汎用ハードウェアを利用しているため、利用ユーザーに納得のいく価格でハードウェアの保守延長を受けることが可能です。

ソフトウェア・ディファインド・ストレージを導入する際の注意点

ソフトウェア・ディファインド・ストレージを導入する際、後からトラブルなどに繋がらないよう、いくつか注意しておくべきポイントがあります。

ここでは、代表的な3つの注意点について、詳しく確認しておきましょう。

注意点①:ソフトウェア選定

ソフトウェア・ディファインド・ストレージを導入する際は、最初にどのような要件でストレージを導入したいかを十分理解した上で、ストレージソフトウェアを選定する必要があります。各メーカーから提供されているソフトウェア技術は、それぞれ得意な機能や特徴をもっています。ストレージは、パフォーマンス、拡張性、コスト、各種機能(QoS, 暗号化, プロトコルサービス)に応じて、システム構成を組まなければ十分な効果を得られません。例えば、バックアップやアーカイブで、一定の容量以上とならないようなシステムの場合、拡張性やパフォーマンスなどは重視せず、価格とシンプルな管理などを重視した方が良いでしょう。その場合、汎用サーバーとJBODの組み合わせで大容量のHDDドライブを用いて構成するストレージを選定することで、大幅コスト削減とシンプルな運用を実現することができます。

注意点②:ハードウェア選定

ストレージ導入要件を元に、ソフトウェアの選定が先に進んだ後、ハードウェアの選定が重要となります。パフォーマンスやコスト、堅牢性などを考慮して、ハードウェアを選定することは、非常に重要な項目となります。このハードウェア選定により、最適なコストパフォーマンスを実現することが可能なのが、ソフトウェア・ディファインド・ストレージの最大の特徴であります。さらに、ハードウェア選定の重要な点としては、選定するストレージソフトウェアとの互換性です。選定するソフトウェアによって、ハードウェアへ直接的にインストールする製品、もしくは、ベースOS(Linux)の上で構築する製品など様々存在します。特にハードウェアに直接インストールする製品に関しては、汎用ハードウェアを利用する場合においても、そのドライバや互換性リストなど注視してハードウェアを選定する必要があります。

注意点③:システム構築

ソフトウェア・ディファインド・ストレージを導入する上で、重要なのがストレージシステムの構築となります。この点は、ソフトウェア・ディファインド・ストレージの一つの課題点とも言えます。ストレージアプライアンスの場合、基本的なストレージ構成は組まれた状態で提供されるため、細かなハードウェア選定や構築といった作業が不要な場合が多いです。ソフトウェア・ディファインド・ストレージでは、ストレージシステムの柔軟性やコストを下げられる一方、システムとして組み上げる必要があるため、その作業やノウハウが必要となってきます。

まとめ

今回は、ソフトウェア・ディファインド・ストレージとは何かについて、基本的な仕組みやメリットも含めて、詳しく確認してきました。

ソフトウェア・ディファインド・ストレージは、特定メーカーのストレージハードウェアに依存しないため、コストを抑えつつ、効率的で柔軟性の高いストレージ管理が可能となります。

トゥモロー・ネットでは、様々なソフトウェア・ディファインド・ストレージ製品を取り扱っており、お客様の要件に応じたソリューションの提供が可能です。

例えば、各種要件に応じた製品例として、シンプルかつコスト重視の場合、TrueNAS, RedHat Enterpriseなどが選択肢と挙げられます。その条件にエンタープライズ用の堅牢性などの要求がある場合、NexentaStorやOSNEXUSなどのフェイルオーバーシステムを兼ね備えたシステムの選択が可能です。拡張性やスループットを重視する場合、Ceph、Qumuloなどのスケールアウト型ストレージが選択肢として考えられます。その他、特定用途に特化した製品としては、AI基盤で超高速ストレージの場合、Weka.IOが選択可能です。仮想基盤での用途で利用する場合、NutanixやVMware VSANのような仮想基盤専用ストレージの選択肢もあります。

 

トゥモロー・ネットでは、自社の製造ラボを用意し事前検証や事前構築などが可能なため、多種多様な要件に対しても、システム構築の観点において、ソフトウェア・ディファインド・ストレージをアプライアンス型と変わらないシンプルな提供が可能な体制を整えております。これまでの様々な要件に対する製品提供実績から得られた知見を生かし、お客様専用にカスタマイズした最適なソリューションを提供しています。

ソフトウェア・ディファインド・ストレージについてもっと知りたい方、導入をご検討の方は、ぜひお気軽にこちらからお問い合わせください。

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この記事の筆者

株式会社トゥモロー・ネット

クラウドソリューション本部

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