クラウドコンピューティングとは?仕組みやメリット・デメリットを解説【トゥモロー・ネット テックブログ】
近年、テレワークなど多様な働き方が浸透した背景もあり、クラウドコンピューティングを導入する企業が増えています。
この記事では、クラウドコンピューティングとは何かという概要から、SaaSやPaaSなどの種類、利用時のメリット・デメリットなどまで解説していきます。
ぜひ参考にしてください。
目次
クラウドコンピューティングとは?
クラウドコンピューティングとは、簡単に言うと、インターネットを通してコンピュータ運用に必要な各機能を利用する仕組み、およびそのサービスのことです。
従来、システム構築を行うためには、サーバーやストレージ、データベースなどを自社で準備しなければなりませんでした。そのため、相応の初期費用が発生し、準備から運用開始までのリードタイムも長くなってしまうことが一般的でした。
その点、クラウドコンピューティングを利用すると、既に仕上がっているシステムをインターネット経由で使用できます。その結果、初期費用の低減やリードタイムの短縮など、多くのメリットが享受できるようになりました。
そのため、コンピュータを使用するビジネスシーンにおいて、クラウドコンピューティングを利用する企業が増加傾向にあるのです。
クラウドコンピューティングの仕組み
クラウドコンピューティングの仕組みは、専門業者の保有するサーバーやストレージをレンタル利用するようなイメージです。その際、柔軟かつセキュリティ性の高いサービスを可能としているのが「仮想化」という技術です。
仮想化とは、簡単に言うと1つの物理サーバー上に複数の仮想サーバーを構築することを意味します。これによって、実際のサーバー数に制限されず利用が可能となり、各仮想サーバーが独立しているため、高いセキュリティ性も確保されます。
クラウドコンピューティングの用途
クラウドコンピューティングの用途は多岐にわたりますが、その中でもファイルの保存や共有、データストレージ、アプリ・システム開発という3つの主要な用途について説明します。
ファイルの保存や共有
クラウドコンピューティングを利用することで、ファイルをクラウド上に保存し、複数の端末やユーザー間で簡単に共有することができます。例えば、Google ドライブや Dropbox などがその代表例です。
データストレージ
クラウドコンピューティングを使用すると、大規模データを安全に保存することができます。クラウドプロバイダーはデータの冗長性を確保し、データの損失を防ぐためにバックアップを取るなどのセキュリティ対策を行っています。
アプリ・システム開発
クラウドコンピューティングを利用することで、アプリケーションやシステムの開発を効率化することができます。クラウド上で開発環境を構築し、必要なリソースを必要に応じて拡張することができます。また、クラウド上で提供されるサービスを活用することで、開発プロセスを迅速化し、コストを削減することができます。
クラウドコンピューティングの種類
一括りにクラウドコンピューティングといっても、その詳細によっていくつかの種類に分けられています。
ここでは、「提供形態」「サービス形態」「運用形態」の3つのカテゴリーごとに、それぞれの種類を詳しく確認していきましょう。
提供形態の種類
クラウドコンピューティングは、提供形態に応じて「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3種類に分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
SaaS (Software as a Service) | ソフトウェアやアプリケーションを動作させられるサービス。 PaaS、IaaSの内容も含まれる。 |
PaaS (Platform as a Service) | アプリケーションの開発環境(プラットフォーム)を提供するサービス。 IaaSの内容も含まれる。 |
IaaS (Infrastructure as a Service) | サーバーやストレージなど、システム構築のためのインフラ基盤を提供するサービス。 SaaS、PaaSに比べると限定的なサービスだが、その分自由度が高い。 |
サービス形態の種類
クラウドコンピューティングは、サービス形態で「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」に分けられます。
パブリッククラウドは、複数の利用者でサーバーを共有するサービスです。低価格で早く利用開始できる点がメリットですが、カスタマイズ性とセキュリティ性はプライベートクラウドに劣ります。
プライベートクラウドは、1ユーザー専用にサーバーを提供するサービスです。ニーズに応じてカスタマイズでき、セキュリティ性も高いのがメリットですが、その分導入にかかる費用と時間はパブリッククラウドより多くなります。
運用形態の種類
クラウドコンピューティングを運用形態で分類すると、「ハイブリッドクラウド」と「マルチクラウド」に分けられます。
ハイブリッドクラウドは、複数のサービスを組み合わせ、一連のものとして利用する方法です。それぞれのサービスのメリットを組み合わせられる点が魅力ですが、構成を自社で考えなければならない点に注意が必要といえます。
マルチクラウドは、複数のクラウドコンピューティングサービスを、用途ごとに分けて利用する方法です。それぞれのサービスが独立しているので、万一不具合や情報漏洩が生じた際のリスク分散が可能ですが、その分運用コストが高くなる点に注意が求められます。
クラウドコンピューティングで得られるメリット
企業がクラウドコンピューティングを利用すると、多くのメリットが得られます。
ここでは、特に代表的な5つのメリットについて、詳細を確認していきましょう。
メリット①:すぐに利用開始できる
クラウドコンピューティングの1つ目のメリットは、利用開始までのスピードが早い点です。
オンプレミスでサーバーなどを用意するとなると、システム構築が完了するまで相応の時間がかかります。その一方、クラウドコンピューティングは、インターネット上で申し込むだけで、事前準備なくすぐに利用できるようになります。
メリット②:初期費用がかからない
クラウドコンピューティングは一般的に、使った分だけの料金を支払う従量課金制を採用しているので、設備投資の費用が不要というメリットもあります。
必要な分だけを契約して料金を支払えばよいので、オンプレミスで準備する場合に比べて、余計な出費を抑えられるでしょう。
メリット③:自社での運用・管理が必要ない
クラウドコンピューティングでは、OSやハードウェアなどを自社で運用・管理しなくてよい点も大きなメリットです。
これらのインフラを自社管理するためには、そのための人員を確保しなければなりませんが、クラウドコンピューティングなら、管理の大半を提供業者に委ねられます。
メリット④:拡張性が高い
クラウドコンピューティングは、拡張性が高い点も大きなメリットです。
たいていのサービスでは、プランを変更するだけ容量や機能の増減ができるので、契約後にリソースに不足を感じた場合でも、ニーズに合わせて柔軟に対応できます。
メリット⑤:いつでもどこからでも利用できる
クラウドコンピューティングは、時間や場所を問わずに利用できる点もメリットです。
利用しているアプリケーションや保存データなどは、すべてクラウド上に保存されているので、オフィス以外からでもアクセスできます。アカウントさえ共有されていれば、PC以外にタブレットやスマートフォンなどからも利用可能です。
クラウドコンピューティングで注意したいデメリット
クラウドコンピューティングには、以上見てきた通り多くのメリットがありますが、それと同時に注意すべきデメリットもあります。
ここでは、代表的な3種類のデメリットについて詳しく確認していきましょう。
デメリット①:インターネット接続しないと利用できない
クラウドコンピューティングでは、利用するすべての情報がクラウド上に保管されているため、インターネット接続しないと使えないというデメリットがあります。
しかし、現代社会において、インターネットに接続できないシーンは考えにくいので、それほど大きなデメリットにはならないでしょう。
デメリット②:サービス終了するリスクがある
クラウドコンピューティングは、提供元がサービスを突然終了し、利用できなくなるというデメリットも考えられます。
このデメリットは、大手企業の提供する信頼できるサービスを選ぶことで最小化が可能です。また、大手サービスで万一サービスが終了するとしても、事前に告知がされるのが一般的なので、余裕をもって移行準備ができるでしょう。
デメリット③:セキュリティリスクがゼロではない
クラウドコンピューティングでは、インターネット経由でシステムを利用する関係上、セキュリティリスクがゼロではない点にも注意が必要です。
しかし、これは高度なセキュリティ対策の取られたサービスを利用すれば、限りなくゼロに近づけられます。
お金を銀行に預ける方が安心なのと似て、十分に対策されていないオンプレミス管理よりは、信頼できるクラウドコンピューティングの方が安心だといえるでしょう。
クラウドコンピューティング選定のポイント3つ
ここでは、自社に最適なクラウドコンピューティングを選定する際に、重要な比較ポイント「機能面」「セキュリティ」「サポート体制」について説明します。
機能面
まず注目すべき点は、クラウドコンピューティングの機能についてです。クラウドサービスには様々な機能がありますので、導入の目的や業務内容に必要な機能が充実しているサービスを選ぶ必要があります。
クラウドサービスを導入する際には、次のような作業を行います。
・クラウドコンピューティング導入の目的を明確にする。
・出先からアクセスしたい、スマートフォンからも利用したいなど、導入するクラウドについてどのように利用したいのか明確にする。
・必要な機能や不要な機能を洗い出す。
これらの作業を行った上で、各クラウドサービスの具体的な検討を進めると、スムーズに導入が進むでしょう。
セキュリティ
自社のセキュリティ対策に適合するかどうかも、クラウドコンピューティングを検討する際に確認する必要があります。インターネット経由でアクセス可能なクラウド上にデータを保存する場合、不正アクセスによる情報漏洩や改ざんのリスクが存在します。したがって、データの暗号化や不正アクセス対策など、どのようなセキュリティ対策が講じられているかを確認することが重要です。
さらに、クラウド上で処理する情報が高いセキュリティ水準を要求する場合は、プライベートクラウドの利用を検討することも有益です。
サポート体制
クラウドコンピューティングでは、サポート体制が重要です。不明点やトラブルがあった際に手厚いサポートを受けられれば、業務効率化につながります。以下のポイントを確認しておくと安心です。
・導入時の設定や環境構築の対応
・不明点やトラブルがある場合の24時間・365日対応
・メール以外にも電話やチャットなどで迅速なリアクションを得られる対応
これらの点を確認して、選択しましょう。
代表的なクラウドコンピューティング3例
こちらでは、代表的なクラウドコンピューティングサービスを紹介します。
AWS(Amazon Web Services)
Amazonが提供しているクラウドコンピューティングサービスは、クラウドサービスの中でも最も歴史が長く、シェアも大きいです。日本でも多くの企業や自治体、個人が利用しており、関連する情報も豊富で、日本語の情報も多くあります。コンピューティングやストレージなど多くの機能が提供されており、新しいサービスや機能追加も頻繁に行われています。
Microsoft Azure
Microsoftが提供するクラウドコンピューティングサービスは、Windows ServerやOfficeアプリケーションとの親和性が高いため、多くの企業ユーザーが利用しています。Windows ServerやMicrosoft Office 365のユーザーにとっては、慣れた操作性や連携のしやすさが特長です。また、社内で利用しているWindows ServerやActive Directoryとの連携も容易であり、ハイブリッドクラウドとしても広く活用されています。
Google Cloud
Googleが提供するクラウドコンピューティングサービスは、Google Cloud Platform(GCP)としても知られています。多くのユーザーは気づかずに利用していますが、GmailやGoogle MapsなどはGoogle Cloudで提供されています。Googleはビッグデータの分析やAI系のサービスにおいて得意としており、その分野において定評があります。
Oracle Cloud
Oracleが提供するクラウドコンピューティングサービスはOracle Cloudです。サーバー、ストレージ、ネットワーク、アプリケーションなどのサービスは、Oracleが管理するデータセンターのグローバルなネットワークを通じて提供されています。幅広いクラウド活用に対応可能です。
まとめ
今回は、クラウドコンピューティングの仕組みや種類、利用するメリット・デメリットなどについて、詳しく確認してきました。
クラウドコンピューティングを利用すると、オンプレミスと比べて初期費用が安かったり、運用の手間が省けたりと、多くのメリットが得られます。
一括りにクラウドコンピューティングといっても、ニーズに応じて色々な種類のサービスが展開されています。今回ご紹介したことを参考に、自社に適したサービスを選定し、ビジネスに役立てていきましょう。
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株式会社トゥモロー・ネット
クラウドソリューション本部
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