エッジコンピューティングとは?概念から仕組みまでを解説【トゥモロー・ネット テックブログ】
分散型のアーキテクチャであるエッジコンピューティングは、IoTデバイスの普及などを背景に爆発的に増加するデータ量に対処するための手法として、また即時反応が必要となる自動運転や製造設備の制御などの領域において活用されます。
なぜエッジコンピューティングという概念が注目されるようになったのでしょうか。また、エッジコンピューティングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。この記事で詳しく解説します。
目次
エッジコンピューティングとは?
エッジコンピューティングとは、従来クラウドやデータセンターにて蓄積・処理していたデータを、コンピューターネットワークの周辺にあたる「エッジ」部分で処理する手法です。IoTデバイスやカメラ、製造設備、車など、データが生み出される場所の近くであるエッジ側で処理を行うことで、データ通信量の削減や対応速度の向上、セキュリティの担保などを実現することができます。
エッジコンピューティングが注目される理由
従来、収集したデータはクラウドなどのストレージに集中的に保管し、処理されることが一般的でした。一方で、IoTデバイスの普及などを背景に、収集されるデータ量は膨大なものとなり、各データ発生源からクラウドへ通信を行うためのネットワーク負荷や、大量のデータを収集するためのストレージ確保が課題となりました。
そこで、IoTデバイスから収集したデータを、収集場所近くで処理したうえで、必要なデータのみをクラウドなどのストレージへ送る手法である「エッジコンピューティング」が採用されるようになりました。
エッジコンピューティングの仕組み
エッジコンピューティングでは、データの発生元となるIoTデバイスなどから、まずエッジサーバーと呼ばれるデバイス近辺に設置されているサーバーへデータを送ります。エッジサーバーでは、IoTデバイスなどから得られたデータのうち、必要なデータのみを選別してクラウドに送信します。各データ発生源にはそれぞれエッジサーバーが置かれ、各エッジサーバーから必要なデータのみがクラウドに送られますので、各IoTデバイスとクラウドの間の通信量や、クラウド側で管理すべきデータ量は大幅に削減できます。
また、エッジサーバー上で一定の処理を行った上で、IoTデバイス等へフィードバックを行う設計方法も考えられます。エッジサーバー上では周辺デバイスから収集できるデータのみしか利用できないという制約があるものの、中央へとデータを送信し、処理結果を受信するという一連の流れを省略して末端の機器を操作できるというメリットがあります。
エッジサーバー上でAIモデルを稼働させ、フィードバックを行うことも可能です。この場合、GPUを搭載したエッジサーバー上に学習済みAIモデルを設置し、IoT機器等から収集したデータに基づき推論を行うことになります。このような用途に向けたエッジサーバーも用意されており、たとえば弊社が一次代理店を務めるSupermicro社では「Supermicro Solutions for Edge AI」としてGPUが搭載されたエッジサーバーを提供しています。
エッジコンピューティングのメリット
エッジコンピューティングを採用する主なメリットは以下のとおりです。
ネットワーク負荷軽減
大量のデータ通信を行うとその分ネットワークに与える負荷も大きくなります。エッジコンピューティングにより必要なデータを選別したうえでクラウド側に送信することで、ネットワークの負荷軽減につながります。また、これに伴いネットワーク設備のコストやインターネット・広域通信などにかかるコストも削減できます。
低レイテンシーでの処理
リアルタイム制御が必要となる製造設備や自動運転を行う上では、クラウド側にデータを送信し、その結果を受領する際に発生するネットワークの通信時間(レイテンシー)を許容できないケースもあります。たとえば工場ではIoTデバイスから収集したデータを所内wifiなどにより送信することになりますが、大量のデータを所内wifiで通信するとレイテンシーは大きくなります。
このような場合、エッジ側でデータを処理し、結果を各種機器にフィードバックするエッジコンピューティングの手法が有効です。
セキュリティの強化
全てのデータをクラウドストレージにアップロードすることで、情報漏えい時の影響拡大などセキュリティリスクも高まります。エッジ側で必要最小限のデータを選別したうえで、クラウド側に送信することで、クラウド側でランサムウェアなどのサイバー攻撃を受けた際にもリスクを下げることができます。
また、プライバシー情報を含むデータについてはエッジ側で加工処理を行うことで、セキュリティ強度を高めることも可能となります。
エッジコンピューティングの活用シーン
以下では、エッジコンピューティングの主な活用シーンを紹介します。
製造業
製造業では、製造設備に設置したIoTデバイスからデータを収集し、設備を制御するような用途においてエッジコンピューティングを活用できます。たとえば、生産ラインにおいてIoTデバイスから収集した製品・半製品の品質データや、カメラで撮影した製品画像データをエッジサーバーで分析し、不良品を検知するような取り組みも可能です。このような処理をクラウド側で行うとどうしても反応速度が課題となりますが、エッジ側で処理を行うことで高速でのフィードバック制御を可能とします。
農業
農業においても、照度センサーや温度センサー、湿度センサーなどIoTデバイスの活用が進みつつあります。農場に設置されたこれらのデバイスから得られたデータを基に、エッジサーバー上でAIによる推論を行い、必要な水量を畑に与えたり、肥料の濃度を調整したりすることも可能です。
広い農場において収集できるデータ量は大量のものとなりますが、これらの処理をエッジ側で行うことでネットワーク負荷を抑えることができます。
特に農業においては人手不足、高齢化、後継者不足などが課題となっていますが、エッジコンピューティングを活用した自律的な仕組みにより、農家の方の負荷を抑えつつ、生産性を高める効果が期待できます。
自動運転
反応速度が重要となる自動運転においては、エッジコンピューティングの技術が多く利用されています。たとえば、車載カメラで読み取った標識の情報をエッジ側となる車内のコンピューターで画像解析したり、周辺の車の情報を読みとり衝突を回避したりといった処理にエッジコンピューティングのアーキテクチャが利用されています。
エッジコンピューティングにより、カメラや速度センサー等で収集したデータを基に、高速に速度の調整やハンドルの制御などのフィードバックを行うことができます。
まとめ
この記事では、エッジコンピューティングについてその仕組みやメリット、主な利用シーンについてご紹介しました。記事中でもご紹介しましたが、エッジサーバー上にAIモデルを搭載し、エッジで収集したデータを利用して推論を行う構成を採用するケースも増えています。エッジ側にGPUを搭載したエッジサーバーを設置することで、エッジコンピューティングのユースケースを広げられますので、選択肢の一つとして押さえておくとよいでしょう。
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