電気通信大学で講義「ベンチャー企業から見たAI関連ビジネスの挑戦」
2024年11月の講義に続いて、2025年1月8日に電気通信大学にて副社長である松浦 淳が情報理工学域学部、高木教授のベンチャー概論講座での講義を担当しました。
今回は大学院生を対象に、オンライン、オフラインで実施し、「ベンチャー企業から見たAI関連ビジネスの挑戦」というタイトルで、自分のキャリアと劇的な変化を遂げているAIやそのビジネスにおける課題や可能性について90分間講演しました。
講義の目的
技術革新を続けるAIの成り立ちと現状を共有。学術的側面とビジネス的側面の両面から理解した上で、過熱するAIビジネスの課題と可能性、そこに挑戦していくことの重要性に焦点を当てました。
1. 自己紹介とキャリアの軌跡
松浦のキャリア形成の背景を振り返りながら、以下のトピックを取り上げました。
海外経験で育んだグローバル&ベンチャー志向
大学在学中経験した1年間の留学経験が、その後のキャリアの基盤となったと語りました。特に、当時のITブームのキッカケとなったシリコンバレーでの経験が、IT業界で働く夢を育むきっかけとなったそうです。
多様な職種での経験
ソフトウェアエンジニア、セールスエンジニア、事業部長、そして起業家としてのキャリアを積み重ねる中で、技術スキルだけでなく、営業力やリーダーシップの重要性を実感。特に、外資系と日系の両方の文化を経験することで得た柔軟な視点を強調しました。
研究テーマと現在のビジネス
松浦の学生時代の研究テーマについて説明。様々な数理モデルを用いた研究内容そのものは現在のビジネスと異なる領域であるものの、当時学んでいた数理モデルが現在のAIでも利用されていると話した上で、学生時代に学んでいたことがその後の人生やビジネスの思いもよらぬところで繋がることもある、とその重要性を説きました。
2. AIビジネスと技術革新?
AIビジネスの現状と、AIにおける学習や言語モデルについて解説。
あらゆるものに活用されるようになったAI
AI技術が、モデルや俳優、映画や小説、自動運転、プログラム開発、弁護士業、コールセンターなど、幅広い分野で活用されることになった現状について説明し、その一方でAIの精度の問題や著作権上の問題が顕在化していることにも触れました。
進化するAI学習を支えるGPU
AIのディープラーニングについてChatGPTを例に説明。AIが様々な数理モデルを基にした予測モデルであるとした上で、AI学習の頻度や学習ボリュームの重要性と、学習や検索によって集めた情報からAIが作り出してしまうハルシネーション(AIが事実に基づかない情報を生成する現象)の課題について解説しました。
AIサービスのためのインフラ
膨大な並列処理/計算を必要とするAIの学習には高性能なGPUの存在が欠かせない一方で、その稼働や冷却にかかる膨大なエネルギーの問題が顕在化していることを解説。
また世界中がこぞってAIビジネスに参入しようとしていることから生じるGPU不足についても触れました。
3. AIビジネスの課題
次々と技術革新が起こるAIビジネス業界。一方で様々な課題が顕在化しつつあることについても解説しました。
倫理的な課題
ハリウッドの俳優によるストライキが記憶に新しい著作権問題や、EUのAI規制法に触れ、AIにまつわる情報管理や倫理課題について説明しました。
電力/環境問題
GPUが24時間稼働した場合の年間の消費電力は一般家庭の23倍にものぼることを説明。また、従来の空冷方式では今後出てくるGPUモデルを冷却しきれず、今後は水冷方式に移り変わっていくのではないかと話しました。
そして、こうした電力や環境への課題は真剣に取り組むべきものであると同時に、企業にとってはビジネスチャンスであるとも述べました。
収益化 (マネタイゼーション)
世界中でデータセンターの建設ラッシュが起こるなど、AIビジネスは過熱の一途をたどる一方、参入に焦るあまり収益化(マネタイゼーション)についての議論がおろそかになっている一面もあることについて言及しました。
競争激化によるサービス低下
様々なAIサービスが提供されている一方で、AIの精度が低いことでサービスレベルが低下するケースも散見されると述べました。サービスの低下は顧客満足度の低下につながり、企業イメージの悪化をもたらすこともあると警鐘を鳴らしました。
4. トゥモロー・ネットってどんな会社?
松浦氏が所属するトゥモロー・ネットの事業とビジョンについても共有。
AIプラットフォーム事業
日本初の「マルチモードAI」による顧客体験(CX)の向上事例を紹介。特に、音声とテキストを組み合わせたシームレスな体験が、高いAI完了率を実現し、顧客満足度を向上させている点を強調しました。。
クラウドコンピューティング/SDI事業
トゥモロー・ネットが取り扱う製品やこれまでの実績について述べるとともに、今後は統合AIソリューションカンパニーとしてサーバーやGPU、仮想インフラからAIサービスまで提供する企業としてさらなる進化を遂げることを力強く語りました。
講義終了後も参加者からは質問が寄せられ、AI技術やAIサービスへの関心の高さや学生たちの熱意が感じられる場となりました。
本日の講義が当日ご参加いただきました学生の皆様のキャリア形成の一助になればうれしく感じます。
電気通信大学の皆様、このような機会をいただきましてありがとうございました。